舞  衣


 舞衣は明治15年頃の改定神楽以降、次第に華美になり、各神楽社中は豪華さを競うようになった。

 金襴の衣装はもとより、ビロード地などに金糸銀糸を縫い潰し、血走ったガラス玉眼やキラキラとした金属片などを付け、龍や獅子、鶴や亀などの刺繍を縫い付けた豪華絢爛な衣装は、気の遠くなるような丹念な細かい作業の積み重ねによって作られ、完成まで数ヶ月を要すものもある。
 また、高価なものになると数100万円にもなる衣装もある。

 八調子と言う速いテンポにのり、勇壮華麗に舞う石見神楽の目にも鮮やかな衣装は、観客を喜ばせ、見る側にとっても楽しみの一つでもある。

 しかし、目に見える表面的なものばかりに捕らわれ過ぎると、本来の神楽の目的から離れて単なる賑やかしい舞になり、邪道に陥ってしまう危険性もある。
 事実、中には「舞の基本や美しさ」、「神楽歌や台詞の丁寧さ」を疎かにして粗雑な印象を受ける社中も見受けられる。
 この様な神楽を見ていると、本来の石見神楽の美しさを知る者にとっては恥ずかしさと不快の感さえ抱く。
 煌びやかな衣装は石見神楽の特徴であり、売り物の一つでもあるが、「神楽の本質と気品」を大切にして頂きたいと思うばかりである。



左の写真は舞衣の製作風景(金城町「きんたの里」にて)