神 楽 面


鐘馗


 現代の神楽面は紙製の面で、石こう型に粘土を詰めて作った型に和紙に糊を付けて重ね合わせ、十分乾燥させた後、型を壊して面を取り除き、目や鼻などに焼火箸で穴を開ける。
 下塗りの後、専用の塗料で彩色して仕上げる。

 明治の初めの頃までは重い木彫りの面であったが、明治15年頃、人形師・木島仙一氏の考案により軽い和紙面に改造され、八調子と言う早いテンポと激しい舞の立ち回りに対応出来るようになった。
和紙の張子面が考案されてされてからは張子面が普及し、広島県など各地で受け入れられている。
 また、神楽面は伝統工芸として受け継がれ、神楽に使われるだけでなく、飾り面、あるいは厄除けとしても重宝されている。

 面を着けて舞うと言う事は単なる神楽の演出効果だけでなく、舞子自身が神になりきれるのである。
 また、舞子自身の年齢を超えて若々しく力がみなぎったり、時には老け込んだり、姫のように女性らしくもなれるのである。

 神面は鬼面に比べ小さく、人間の顔と同じ位の大きさか若干大きい程度である。
 表情は「へしみ」と言う口元を下側へ折り曲げて物を言わない形相の種類が多い。また、「須佐之男命」や「鐘馗」、「八幡麻呂」などの面の眉は太く、「五神」や道がえしの「武甕槌命」」などの面は渦形の眉や髭をしているのが特徴である。

 「鬼」や「五神」などが付ける面は大きく、中には縦横50cm以上にもなる面もある。
これらの大型面は面の内側に顔当てを付け、鼻の穴から外部が見られるようになっている。

 神面や鬼面の他に「姫面」、「福神面」、「尉婆(じょうば)面」、「ひょっとこ面」、「動物面(狐や猿)」などの面がある。 
 今日の蛇胴の考案者は浜田の花立菊一氏である。
明治15年頃の改定神楽の際に、今日の蛇胴が考案されてからは蛇舞にリアル感が備わり、八頭の大蛇が織り成す様々な造形の舞は、凄みのある壮大なスケールを感じさせる。

 簡単に製作工程を説明すると、まず、割った竹を輪状にして骨作りをし、木製の枠(長さ約2m)に添えて骨組みをした後、和紙を張り付けていく。
 十分に乾燥させた後、枠から外し、鱗を描いて彩色していく。
こうして出来た胴体を糸でつなぎ合わせて蛇胴の完成となる。(長くて巨大な提灯をイメージして貰えれば良いと思います。)
 完成された蛇胴は直径約40cm、胴長約16、17mで、青、赤、黄、白、橙、茶、緑などの彩色が施されている。
 右の写真は蛇胴の製作風景(金城町「きんたの里」にて)


 直面(ひためん;素面)の舞は採物を持って舞う、いわゆる神事的、儀式的な舞に見られ、舞人は全てのけがれを祓い清める。
そして、神を迎えて祈願を行い、また神の意志を伝える役目を担う。
 一方、着面の意義を考える時、そこには本来神や姫の面を着けることよって夫々の神になり切って舞い、その神格に応じた厳格な舞の所作を持ち合わせていなければならないと思うのである。



 松原神楽社中様(浜田市三隅町)の御厚意により桐製の「十羅刹女」の木彫り面を撮影させて頂きました。
今は亡き当社中の方が納得いくまで何度も何度も作り直されたそうです。
作り手の思い入れ、魂を感じさせる素晴らしい出来栄えの神楽面に感動しました。
実物の素晴らしさにはとても敵いませんが、御紹介させて頂きました。
 私のような者が言うのもおこがましいのですが、これからも貴社中の「有形無形」の財産として大切に保存されることを願って止みません。
 松原神楽社中の皆様、本当にありがとうございました。